淑女の皆様ごきげんよう。
ロマンスヒルズコレクションに、安里紬先生の新作が登場します!
真面目なヒロインとクールな医師のすれ違いロマンスです。

KISS14


甘いキスで始まる恋 ~ドクターは俺様御曹司~
安里紬


「思い出させてやる。もう二度と忘れられないくらいに」

朝起きたら、隣には知らない男が裸で寝ていた。
あなたは誰?どうしてこんなことに?
真面目な保健師と、いつも不機嫌な俺様医師。
素直になれない二人のすれ違いを丁寧に描いた瑞玉のロマンス。

大病院に転職した栞奈は、希望に満ち溢れていた。
保健師としての長年の夢を叶えるチャンスがやっと訪れたのだ。
しかし職場についた途端、絶望に突き落とされる。
白衣を着て目の前に立っていたのは、あのときベッドにいた男だった。
彼の名は成瀬拓人。院長の息子で、優秀な医師だという。
整った美貌。冷たい瞳……二度と会いたくなかった男。
だってわたしは……あの夜のことを全く覚えていないんだもの。

☆作者紹介 安里紬(Anri Tsumugi)
恋愛小説作家。Web小説投稿サイトを中心に執筆活動中。
現代女性の日常を切り取った秀逸な作品が多く人気が高い。
ロマンスだけでなく、人としての成長を描いた作品が大好物。
チョコとパンをこよなく愛する。岐阜県在住。

エブリスタ マイページ




【編集部より】
ネット小説投稿サイトで大人気の恋愛小説が、ロマンスヒルズコレクションに登場!
大長編のストーリーはそのまま、書籍用に書き下ろし、新たに生まれ変わりました。
クールで仕事一筋なヒロインと、滅多なことでは笑わないヒーロー。
二人のすれ違いと成長、ロマンスをお楽しみください。
 
 
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 ゆっくりと意識が浮上したのを感じる。外から聞こえる小鳥の囀さえずりが朝の訪れを告げていた。
 柊栞奈(ひいらぎかんな)は眩しさに顔を顰め、小さく唸った。普段よりも太陽の光を強く感じるのは寝坊したからだろうか。そうだとしても、遮光性に重点を置いて選んだはずのカーテンが役目をなしていない気がする。
 栞奈は未だはっきりとしない脳に酸素を入れるため、布団の中で足先をピンと伸ばしながら深呼吸をした。
 
「いったぁ」
 
 酷い頭痛と倦怠感に、思わず声が出た。静かな室内の空気が震え、ようやく時間が動いた気がする。
 栞奈が体勢を変えようと身体を動かした時、何か硬いものに足をぶつけた。栞奈にはベッドに硬いものを置く習慣などない。大切にしている睡眠の妨げになるものは徹底的に排除しているのだ。恐る恐るそちらへ顔を向けると、目の前に目を閉じた知らない男の顔が現れた。
 
「だ、誰……?」
 
 驚きのせいで速くなった鼓動が、今度は羞恥と不安で暴れ始める。その男がやけに整った顔つきをしているせいだ。
 長い睫毛、男性らしく整えられた眉毛、筋の通った高い鼻、薄くて形の綺麗な唇、すべてが計算されているように美しい。少し開いている唇から色気が漏れている気がして、栞奈は目を逸らした。
 先程から受け入れがたい事実を見ているが、それどころではない。まだ確認しなくてはいけないことが山のようにある。身体に触れるシーツの感触が何も着ていないことを物語っているのだ。更に、一瞬見えた男の鎖骨やその先にある引き締まった胸板が、男の状態も表している。
 
「……嘘でしょ」
 
 信じられないことに、この男がどこの誰で、どうしてこうなったのか、未だに記憶が蘇ってこない。相変わらず目の前で気持ちよさそうに眠っている本人に確認すればいいのだろうが、事実を突きつけられたら、ますますどうしたらいいのか分からなくなるだろう。
 その時、不意に男の身体が動き、伸びてきた腕にあっさりと捕まってしまった。しっかりと抱き寄せられ、密着した身体に男の温もりと滑らかな素肌を感じた。大きな手がゆっくりと背中を滑ったせいで、どくんと心臓が跳ねる。
 覚えていないくせに、この手に危険を感じた。これ以上、勝手を許してはいけない、と焦燥感に襲われる。
 
「ねぇ」
 
 栞奈は勇気を出して、小さな声で話しかけた。抱き寄せられたことで、栞奈の唇が男の首元に触れてしまった。吸い込んだ空気にシトラスと熱を感じ、反射のように、みるみるうちに身体が火照っていく。その中に微かに馴染みのある匂いが混じっている気がしたが、混乱している栞奈が冷静に記憶を探る余裕はなかった。
「ねぇ、ちょっと」
 栞奈は混乱の中であっても、この危険な腕の中から逃れなければならない、と確信していた。記憶はないのに、身体は覚えていると言っている気がして恐怖すら感じる。
 
「起きてよ」
 
 今度は起こす意思を持って、はっきりと声をかけた。すると、ようやく男から小さく掠れた声が漏れた。
 
「あ、そうか……」
 
 そう呟いた男の声は低くて、艶のあるものだった。
 
(声までいいなんて、ずるいわ)
 
 ますます危険だと思うのに、栞奈は自分からその腕を抜けることができない。包まれるような抱かれ方は経験がない。
 これまで何人かと交際してきたが、自分から甘えることなど決してなかったし、甘えさせてくれる男性もいなかった。強くて、しっかり者。それが自分らしいと思ってきた。それなのに、今はまるで甘えているようで自分らしくない。
 栞奈を抱き締めているのは知らない男で、不埒な手で触れてくる男だ。安心できるはずもないのに、強く突き放せない自分にも納得できない。
 
 男の腕が緩んだことに気付いた栞奈は、慌ててその胸板に手をついて距離をとろうとした。だが、実際は男の手の方が速く動いていた。顎に長い指が添えられ、クイッと持ち上げられてしまったのだ。抵抗しようにも一瞬のことでできなかった。
 
 気付けば、栞奈は唇を男のそれに塞がれていた。無遠慮に唇を吸い上げられ、歯列を這った舌が強引に咥内へと割り込む。舌を絡めとられ、頬の内側を執拗に撫でられる。
 油断していた栞奈の身体に痺れが走った。男の舌を許すまいと抵抗してみるものの、それを分かっているかのような自分勝手で性急な動きに翻弄される。まるで栞奈の弱いところを知っているかのような艶めかしい舌の動きに、強固なはずの理性がガラガラと崩壊していく気がした。
 
 この行為に愛はないと分かっているのに、まるで愛しているとでも言いたげな激しいキスに我を忘れそうになる。
 甘くないキスなんていらない。それなのに、吐息とともに嬌声が漏れ始め、身体の奥で熾火が激しさを増す。自覚のない何かが動き出そうとする。早く止めなくてはと思うのに、背中を這う手に宥められてしまう。男の舌と手に溺れてしまいそうだ。
 
 突然、身体が揺れた。仰向きへと体勢を変えた早業に唖然とした。覆いかぶさる男からキスを深めようとする気配を感じ、なんとか理性を手繰り寄せる。
 僅かにできたキスの合間を見て、栞奈は力一杯男の肩を押した。解放された唇は痺れているし、喉は乱れた呼吸のせいで痛む。
 
 見上げると、至近距離に男の顔があった。熱を感じたキスからは想像もできないような、冷たい瞳が栞奈を睨みつけてくる。長い睫毛に縁どられた瞳は思っていたよりも大きかった。その透明度の高い茶色の虹彩に引き込まれそうになる。さらりと揺れる柔らかそうなブラウンの髪に触れたくなる。
 
(なんて綺麗な男……)
 
 男の唇がゆっくり動くのを見つめる。そうして出てきた言葉は―――――。


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