淑女の皆様ごきげんよう。
3/20発売!ロマンスヒルズコレクションに月乃ひかり先生の新刊が登場します!
英国摂政時代が舞台の大長編!伯爵令嬢の物語をお楽しみください!
罪深き公爵と捨てられた花嫁
罪深き公爵と捨てられた花嫁
月乃ひかり


好きになったのは、私を捨てた夫だった……。

両親を失い、天涯孤独の身となった十五歳の伯爵令嬢コーデリアは、家同士の取り決めで子爵と結婚することになった。
しかし夫は妻であるコーデリアを無視し、ヨークシャーにある田舎の屋敷に置き去りにした。
 
五年の月日が流れ、コーデリアは決意する。ロンドンで別人として生きていこうと。
ヨークシャーを旅立ち、ロンドンで生活していたコーデリアは、見目麗しく危険な紳士と出会うのだが……

英国摂政時代を舞台にした、華やかなリージェンシーロマンス。






月乃ひかり先生
について
ムーンライトノベルズなどネット小説サイトで活躍中の作家。
代表作は『宮廷女医の甘美な治療で皇帝陛下は奮い勃つ (ムーンドロップス)』


★編集部からのオススメポイント~19世紀英国の世界を感じたい貴女に~
文庫本1冊以上!大ボリュームの長編です。
伯爵令嬢のコーデリアと、彼女の夫であるデヴォン子爵。
華やかな摂政時代を舞台にした作品です。
二人は完璧な人間ではありませんが、本当の愛を知ることで成長していきます。
翻訳ロマンス小説の雰囲気がありつつも、ティーンズラブ小説のようにホットな作品。
ティーンズラブ小説をお読みになっている方々に是非オススメしたいです。

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登場人物紹介

コーデリア :伯爵令嬢。天涯孤独になり15歳で結婚することになるが…
デヴォン子爵:若く美しい青年貴族。祖父に勝手に結婚を決められてしまい…


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最上の男よりも悪い夫はほかにない──『アントニーとクレオパトラ』

 コーデリアは、目の前にいる大人の男性から漂う威圧感と不機嫌さに恐れをなしていた。
 ときおり濃いサファイアのような青い瞳から冷たい視線を向けられたかと思うと、大仰に溜息を吐いて目を逸らし、馬車の窓の外を眺めている。新婚の新郎とは思えないほど退屈そうな、ともすれば、なげやりな態度だった。
 でも、コーデリアは彼の視線が自分から離れるとほっとした。
 何が何だか分からないうちに、彼の屋敷に連れて行かれ、形ばかりの簡単な結婚式を挙げた。

 デヴォン子爵……。
 彼が自分の庇護者で、夫となる男性。

 それも、結婚式の祭壇の前で初めてあった人。
 まるで黄金の糸を紡いだような金色の髪、細身なのに筋肉質そうな体。濃紺のフロックコートを颯爽と着こなした姿は、物語に出てくる王子様そのものだった。あまりの素敵な姿にドキドキして、足が震えた。その瞳から優しい笑顔が向けられるのを期待していた。

 なのに、彼はヴァージンロードを歩くコーデリアを不遜な顔で凝視していた。コーデリアが近づくと、彼は驚きのあまり目を剥いた。たぶん、想像していたような妻とは違ったのだろう。なにしろ彼は二十三歳で立派な子爵だというのに、自分は、十五歳の誕生日を迎えたばかりだった。

 八歳も年が離れているのだから。

 結婚の誓いの言葉を述べる彼の苛立たしい表情を見れば、この結婚が、彼にとって意に染まぬものだということが明らかだった。彼のあからさまな態度に、ずきんと心臓が痛み、悲しくて一瞬にしてシンデレラから灰かぶりに逆戻りしたような気がした。

 それに周りをよく見ると、その祭壇は、屋敷の中に作られた急ごしらえの簡素なものだった。
 花婿付き添いも、花嫁付き添いもなく、立ち合いは彼のおじい様とコーデリアの代理人、この屋敷の主だった使用人のみであった。
 彼には姉もいるらしいが、姉の姿も見当たらなかった。
 でも、デヴォン子爵の不機嫌な表情が唯一、コーデリアにとって、これはロマンティックな結婚ではなく、義務であり便宜上のものだという現実を思い出させた。
 
 ──期待しちゃダメ。

 コーデリアは震える足で、夫となるデヴォン子爵の傍らに並んだ。
 そもそも、この結婚はお互いのおじい様同士の取り決めなのよ。この取り決めに従う以外、私には生きる術はないのだから。
 コーデリアは、小さなブーケを胸に抱いてそっと目を伏せた。
 
 ♢♢♢♢♢♢

 遡ること、ちょうど二週間前にコーデリアの両親が不慮の事故でこの世を去った。コーデリアの家は伯爵家ではあったが、家計は火の車だった。領地が数年前に洪水の被害にあい、不作が続いた。父は領民を思って投資を始めたが失敗してしまったのだ。由緒ある伯爵家に大勢いた召使いには暇が出された。

 もちろんロンドンのメイフェアにあった父自慢の屋敷も売り払ってしまった。
 代々続く伯爵家の屋敷も倹約のため、日当たりのいい一角にある部屋だけを使用しており、他の部屋は節約のため閉めていた。
 小さい頃から伯爵家に仕えているばあやだけは、母やコーデリアのことを心配して一緒に館に残ってくれていた。そのため家の中のこと、例えば食事の支度や洗濯などを、コーデリアは年老いたばあやに負担をかけないように、自分でしなければならなかった。
 そんな慎ましい生活にも慣れたある日の事、父のロンドンの知人が手配した馬車がやってきた。父と母は、その馬車に乗ってロンドンに向かった。なんでも父の友人でもあった銀行家が、資金を用立ててくれるということだった。

 でも、それが最悪の事態を引き起こした。
 旅の途中、先を急ぐあまり馬車が曲がり角を曲がり切れずに横転してしまったのだ。御者は幸いにも草むらに投げ出されて無事であったが、父と母は致命的な怪我を負い、二人とも天に召されてしまった。
 あまりに突然のことだった。コーデリアは、悲しみよりも空虚を感じた。
 あの日、父は出発前に「これで生活も楽になる、いい子でばあやと待っておいで」と言って、コーデリアを抱きしめてくれたのだ。母の顔にも不安が消えて、安堵と期待が浮かんでいた。

 ──なのに。

 両親が出発した数日後には、父の代理人が慌てた様子でコーデリアの元に駆け付けた。訳も分からないまま、喪服に着替えさせられ、葬儀の行われる教会に向かった。
 涙は出なかった。きっとこれは悪い夢で、夜中にぱっと目が覚めたら父と母がいるような気がした。
 でも、コーデリアが目を覚ましたのは、温かみのある自室ではなく、漆喰の真っ白な壁に、小さな灯り取りの窓のある殺風景な部屋だった。
 教会の中にある部屋のようで、壁には木彫りの十字架が飾られていた。
 どうやらコーデリアは葬儀の最中に気を失ってしまったようだった。教会の小さな部屋に一人寝かされていた。コーデリアは起き上がって、部屋の戸を開けて廊下に出ると、葬儀はすでに終わっていた。廊下の突き当りにある薄い木の扉から、聞き覚えのあるわずかな身内の声と代理人の話し声が聞こえてきた。

「──では、どなたもコーデリア嬢を引き取らない、ということで宜しいですね」

「当り前じゃないの。そうでなくともローズベリーには、お金を貸していたのよ。そのお金も返されることなく、死んでしまったし。ましてや、持参金の必要な娘を引き取るという奇特な家があるものですか。たいして近しい身内でもないし」

「そうだな、コーデリアには、老婦人の付添婦や小さな子供の家庭教師を紹介してやってもいい。それが我々にできる唯一の事だ」

「わかりました。では、コーデリア嬢は、どなたも引き取らないということで書類を作成いたします。ローズベリー伯の領地の屋敷は限嗣相続ですので、イタリアにいる遠縁の男性に継承されます。コーデリア嬢の今後の身の振りは、私の方で検討して、何かありましたらご連絡させていただきます。ローズベリー伯が皆様にお借りしていた借金は、無保証人であったので、借用人死亡で負債は消滅します」
 
 代理人がそう言うと、身内からは貸していた金が戻らないことへの不満の声が漏れた。だが、代理人はよくあることなのだろう、それらの声を聞き流し、書類を鞄にしまった。
 集まっていた身内らは、口々に不満を漏らしながらも帰り支度を始めたのだろうか、衣擦れの音がざわざわと聞こえてきた。
 
 ──まずい、戻らなきゃ……。

 コーデリアは、立ち聞きしていたことが分かったら、身内の者たちが気まずい思いをするのではないかと思い、急いで先ほどの部屋に戻った。

 これは、夢でも何でもない。
 父と母は亡くなったのだ。そして自分は天涯孤独になった。
 これからは、一人で生きて行かねばならない。
 そう思うと、悲しみよりも不安が勝った。コーデリアは、十五歳ながら現実的な感覚を持ち合わせていた。お金が無くなって嘆き悲しむ母を見ながら、ばあやと協力してわずかな食材で食事を作ったり、洗濯をしたり、家の中で自分にできることはすべてやってきた。
 だが母は、伯爵夫人というプライドもあったのだろう。
 家事はコーデリアに任せきりで、家のことは何一つしなかった。父は、投資が失敗してからは、親戚や知人にお金を借りに回っていて、あまり領地には戻ってこなかった。
 先ほどの親戚たちが言っていたように、きっと自分はどこかの老婦人の付添婦となるのだろうと思った。
 ぼうっと壁の十字架を見ていた時、代理人がぎぃっと戸を開けて部屋に入って来た。

「目を覚まされたのですね。コーデリア嬢、改めてお悔やみを申し上げます」

「ありがとう……」

 代理人にそう言われて、はじめてコーデリアの頬をひとしずくの熱い涙が伝った。
 父と母が死んで、誰かにお悔やみを言われたのはこれが初めてだった。父と母の死を悼むきっかけをこの代理人の男性が与えてくれたのだ。

「あなたに、ひとつお話しておくことがあります」

 その代理人の瞳には、親戚たちにはない慈悲深さが見えた。

「あなたの今後についてです」

「知っているわ、さっき聞いてしまったもの。私、付添婦になるのでしょう? どこかの老婦人の」

 そう、これまでずっと夢みていた舞踏会も、素敵な優しい王子様との出会いもなにもかも、自分とは無縁になるのだ。老婦人の田舎の屋敷で一生を終えるのだろう。その老婦人と孫たちの慈悲に縋って。
 
「その選択はあなたの亡くなったお父様は望んではいないでしょう。じつは、先ほど集まっていた親戚の方々にはお話はしていないが、ローズベリー伯にもしものことがあった時に、あなたの後見をお願いできそうなお方がおります。あなたのおじい様がフランスに住んでいた時の知人だった方です。まずは、そのお方にお話してみましょう」

「私のおじい様?」

 代理人は、ゆっくりと頷いた。
 それは初めて聞いた話だった。そういえば、おじい様は昔フランスに住んでいたと聞いたことがある。でも、おじい様はコーデリアが生まれて間もなく亡くなってしまったため、その顔さえも覚えてはいない。

「私はこれからロンドンに参ります。その後あなたを迎えに来ましょう。二週間後に迎えに来ますから、トランクに必要な荷物を詰めて屋敷で待っていてください。なに、心配することありませんよ。きっとうまくいく」

 代理人はそう言ったが、コーデリアはおじいさまの知人の家に引き取られるのも、老婦人の付添婦となるのでも、どちらでもよかった。
 ただ、生まれ育った家が全く知らない遠縁に渡り、父の優しげな声や母の微笑みも、もう自分に向けられることはないのだと思うと、涙がとめどなく溢れてきた。

 それから二週間後、代理人からもたらされたのは思いがけない話だった。

「コーデリア嬢、あなたの後見人が見つかりました。後見人というか、あなたの夫となる人です。実は、あなたには生まれながらに婚約者がいたのですよ。ご存知でしたか?」

「ええっ? 私に? まったく聞いたことがありません」

 コーデリアは、その話に驚き、ぶんぶんと思い切り頭を振って答えた。

「あなたのおじい様と、夫となる方のおじい様同士の取り決めだったようです。お相手の方も貴族ですよ。それもとても裕福な。これであなたも一安心ですね」

 代理人は嬉しそうにコーデリアに言ったが、コーデリアは不安だった。
 いったい誰が身寄りもなく、持参金のない娘を妻に迎えるというのだろう。きっとお荷物になるのではないかしら。
 その不安を読み取ったように代理人が言った。

「そのお方は、デヴォン子爵様とおっしゃいます。社交界デビューしていないあなたは知らないかもしれないが、若く、とても裕福な方です。もちろんロンドン社交界でも花婿候補として、引く手あまたの紳士なのですよ。そのお方のご祖父様は健在で、快くお孫さんにあなたが嫁ぐことを了承してくださいました。なんという幸運なのでしょう」

 ──でも、その人の本心はどうなのだろう?

 心の片隅に一抹の不安を覚えながらも、コーデリアはデヴォン子爵という名前からどんな男性なのか、なぜ自分との結婚に同意したのか、あれこれと想像した。
 フランス風の爵位名になぜか想像が掻き立てられ、ロマンティックにも、きっと彼は恋人に振られた後で、傷心のあまり自暴自棄になって私との結婚を承諾したのではないのかしら?
 そんな妄想が浮かんだが、今のコーデリアには、この話を自分から断るという選択肢はなかった。たった十四歳のコーデリアは、大人が決めたことに従うほか、生きる術がなかったのだ。



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