淑女の皆様ごきげんよう。
なんとロマンスヒルズコレクションに泉野ジュール先生の新作が登場します!
ロマンス小説のファンアートでも有名な、イラストレーターのコマさん @watagashi4による豪華イラストが満載です!

獅子は生贄に愛を乞う
獅子は生贄に愛を乞う
泉野ジュール



「なぜ、俺を誘惑する? なぜ……俺を苦しめる?」

 決して愛してはいけない相手に心奪われた王。政略結婚で敵国に輿入れした王女。 すれ違う二人は真実の愛を見つけることができるのか。  

大国ダウントの王女アリエルは、敗戦国マクラウスの王、ジュディアスとの結婚が決まったと知らされ心の底から驚いた。 意地悪な姉たちからは、北方に住むマクラウスの人々は醜く、若い娘を生贄にする蛮族だと聞かされていたからだ。 アリエルは怯えるが、政略結婚は王族の役目だと受け入れ、婚姻の儀式に向かう。 
しかし祭壇の前に立っていたのは、獅子のように逞しく美しい男だった。
 彼は氷のように冷たい灰色の瞳でアリエルを見下ろした。 
「望むと望まざるとにかかわらず、君は俺の妻になる」 
 
イラストレーター、コマ氏による挿絵が8点&キャラクター設定やラフなどを収録。 
泉野ジュール先生の紡ぎ出す新しい世界を、美麗なイラストとともに存分にお楽しみください。


【編集部より】
翻訳ロマンス小説には「ハイランダーロマンス」というジャンルがあります。 北国スコットランドが舞台だったりスコットランド人のヒーローが主人公だったりする設定で、イングランドとスコットランドとの文化の違いや歴史的な軋轢がテーマだったりする物語が多いのが特徴です。

本作はそういうハイランドの世界観をイメージした架空の国の物語。
作者の泉野ジュール先生はハイランダーロマンスが大好きだとのこと。「ハイランダーが主人公のロマンスを書いてみたい」という先生の強い希望から、本作が生まれました。
 
そして、イラストはあのコマさん。
集英社クリエイティブの連載でもハイランダーの魅力を語っていますし、ネット小説やロマンス小説のファンアートを描いていることでも有名な彼女に、本作のイメージを描いていただくことになりました。

つまり本作は、ハイランダーロマンスが大好きな二人がタッグを組んだ作品ということに!

もちろんハイランダーロマンスがお好きな人も、そういうジャンルを全く知らない人も、どちらにも自信をもってオススメできる作品となりました。

野生的なヒーローと、情熱を胸に秘めた忍ぶヒロイン。
ときにはハードな展開もありますが、これぞロマンスといった醍醐味を堪能できるすてきな物語です。重厚感あふれるイラストとともにお楽しみください。

★泉野ジュール先生のホームページはこちら

★コマさんのツイッターはこちら


★コマさんから届いた応援イラストです!


 s_pr_03
このイラストからも、甘いだけではないロマンスの雰囲気が伝わりますでしょうか・・・!
実は…書籍のほうには、別バージョンのイラストも入っております。
文字が読みやすいように少々調整していただいたのがこちらに公開しているイラストなのです。
さて、実際はどんなイラストだったのか。書籍でチェックしてみてください。



★登場人物紹介

アリエル……大国ダウントの王女。
ジュディアス……マクラウスの王族。ダウントに反乱し捕らえられる。
b7ee691c-s
最終的にはこちらの設定になりましたが、書籍のほうには、初期のキャラクター設定時のイラストも入っております。

ラフ1

初期のイメージイラスト。キャラクターが固まる前の段階なので、髪型や年齢設定は少々異なるのですが、とある場面での二人の様子です。



★作中のイメージイラスト

ss023

一人で城を見上げるヒロイン、アリエル。彼女にはどんな運命が待ち構えているのでしょうか…
こちらも初期のものになります。実際の挿絵には、別のバージョンが入っています。違いをお楽しみください。


 
→ご購入はこちら

Kindle unlimitedに登録すると0円で読み放題!




お試し読みはこちら
~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★

 たとえどれだけ王宮での生活が息苦しくても、王女アリエルは希望を失ったことはなかった。今までは。
 いくら国王の娘とはいえ、アリエルの母はただの元使用人であり、たまたま王に見初められて関係を持ってしまっただけの身分の低い女だった。妾や第二夫人でさえない。
 だからアリエルの王宮での立場はひじょうに悪く、窮屈で、敵が多かった。
 
「お父さまはとうとうアリエルを見捨てたのよ。いい気味だわ」
 
 腹違いの姉のひとりが、もうひとりの腹違いの姉と、おべっか使いの公女たちに向かってさも愉快そうに言い放った。
 
「なんでも結婚相手は獣のように醜悪な男だというじゃないの! きっと体中に毛が生えていて、口には牙があるのよ。北方には若い娘を生贄にして火にくべる蛮族がいると聞いたこともあるわ……きっとそんな野獣でしょうね!」
 
 公女たちが甲高い悲鳴を上げて姉の言葉にうなずいているのを、アリエルは薄く開いた扉の隙間からのぞき見た。姉は意地悪で陰湿な性格だったが、城内の事情には驚くほど詳しい。
 アリエルは身震いした。
 牙があり、体中に毛の生えた、若い娘を火にくべる蛮族だなんて! アリエルはいつか自分が結婚しなければならないことを理解していたし、その結婚が愛によるものではなく、 父のための政略結婚になるだろうことも、納得していた。
 王の娘ではあるが、王女たちの中で地位の低いアリエルは、いい政治の駒なのだ。
 でもまさか、こんなことになるなんて。
 姉たちと公女たちは豪奢なドレスに身を包みながら、贅を尽くした応接間のひとつを白昼堂々占拠して噂話に熱中している。なにがそんなに楽しいのか、誰かを悪しざまに語る時の彼女たちは実に生き生きとしていた。
 一方、アリエルはそういったことにあまり興味を持てない性格だった。
 アリエルは草木や花、自然を愛し、愛する母や優しい乳母と和やかにその日の出来事を面白おかしく語り合うのを好んだ。
 たとえ王宮の外れの寂れた小屋だけがアリエルと母に許された住まいだとしても、決して文句は言わなかった。与えられた小庭の世話、母が淹れてくれる紅茶、父から贈られた数冊の本……。アリエルにはいくつも楽しみがあった。ささやかながらも幸せだった。
 それなのに……。
 
(いけない、いけない、急がなくちゃ!)
 
 音を立てないように気をつけながら、アリエルはのぞき見していた扉から慎重に離れた。彼女たちに見つかったら、また延々と嫌味を聞かされる羽目になる。
 父に呼ばれた謁見室まで、城の中を足早に抜けた。アリエルが王城の本館の中を行き来できる機会は少ないが、その構造はしっかり覚えている。
 頑健な石造りでありながら、美麗な彫り飾りをあちこちに施されたダウント王城は、アリエルの四代前の祖父が建てたと言われている。最も大きな本館が中央にあり、それを守る忠実な護衛のように、東の塔と西の塔が左右にそびえている。後方には厩舎があり、騎士や歩哨の駐在所があり、広大な広場があった。
 それをさらにぐるりと囲う高い城壁があって、アリエルの普段の住まいはその隅にひっそりと隠れた、こぢんまりとした離れの小屋だった。
 でも、もしかしたら、アリエルはもうすぐその住み慣れた場所に別れを告げなければならないのかもしれない。
 しばらく進むと、アリエルは謁見室の扉の前にたどり着いた。
 鷹の紋章が大胆に彫られた重厚な木の扉を前に、アリエルはぐっと息を呑み込み、覚悟に顔を上げた。
 扉の前に立っている、甲冑で顔を隠した護衛の騎士はアリエルの姿を見て、手にした槍棒の柄で廊下を叩いた。
 
「アリエル王女のお成りです!」
 
 こんなふうに、アリエルが本当に王女のように扱われることは珍しい。もしかしたら、アリエルが輿入れする話は、すでにあちこちに広まっているのかもしれない。
 蝶番にたっぷり油を塗られた扉は、音ひとつ立てずに滑らかに開いた。
 王の謁見室。まるで大聖堂のように天井の高い大部屋には、すでに少なくない人間が集まっていて、どの顔もじっとアリエルを見つめる。国政を担う主要人物ばかりだ。
 その中には、顔見知りのトリスタン公爵もいた。アリエルを軽んじる貴族が多い中で、彼だけはいつも親切にしてくれていた。
 そのトリスタン公爵が、なんとも言えない悲しげな表情でアリエルに視線を注いでいる。
 
「よく来たな、アリエル。わたしの娘」
 
 大部屋の最奥にある王座に腰掛けた父が、顎を上げて合図をしたので、アリエルはゆっくりと絨毯の上を歩いた。父の前まで来ると、ひざまずき、深く頭を垂れる。
 
「ご機嫌麗しゅう、お父様。お顔を拝見できて嬉しく思います」
 
「どうしてここに呼ばれたか、わかっているな」
 
 父は硬い表情でアリエルを見すえながら切り出した。アリエルは顔を上げるとうなずいた。
 
「乳母が……おおまかに教えてくれました。わたしの婚約が決まったようだと……」
 
「婚約ではない。結婚だ。二日後にしてもらう。相手についても聞いているな」
 
「え、ええ……」
 
 姉たちの暗い噂話を思い出し、身震いしそうになる背筋をなんとかぴんと伸ばしながら、アリエルは答えた。
 
「確か、北方マクラウスの元王族の生き残りであられるとか……」
 
「『元王族』ではない、今も王族だ。マクラウスは小さくとも王国なのだ。現在は我々ダウントに属しており、独立は許していないが、自治権はある」
 
 アリエルはなんと反応すればいいのだろう? 『まぁ、それは素晴らしい』? 『わたしのような庶子に一国の王との縁組を整えてくださって、ありがとうございます』?
 ──たとえそれが、体中に毛の生えた、鋭い牙を持つ、若い娘を生贄にする蛮族の王であっても?
 アリエルが黙っていると、父は多少の理解といくらかの同情をにじませながら、王座から立ち上がった。ひざまずいたままのアリエルに手を差し伸べて、彼女をすくっと起立させる。
 父王は大柄な男ではなかった。見た目もぱっと見は特に目立つところのない平凡な造形だ。しかし、アリエルと同じ漆黒の髪とスミレ色の瞳は、じっと見つめていると吸い込まれてしまいそうな不思議な力がある。
 
「お前も知ってのことと思うが、マクラウス軍は我々に反乱を起こしたばかりだ。わたしとしては、二度とそのようなことが起こらないようにしたい 。つまり……お前には平和の架け橋になって欲しいのだよ、アリエル。お前ならそれができると、わたしは信じている」
 
 父は告げた。
 断れるはずもなかった。
 ああ、なんてことだろう。アリエルはすでに生贄なのだ。

 父の言うことに間違いはなかった。つまり、アリエルの婚礼の儀式は本当にあれからたったの二日後に執り行われることになっていたのだ。
 まだ幼女の頃から、いつか来るこの日のためにと、母がこつこつと縫い続けてくれた婚礼のドレスに身を包んだアリエルは、王城のすぐ側にある輝かしい大聖堂の入り口にたたずんでいた。
 この重厚な入り口をくぐれば、奥の祭壇前に夫となる男が待っている。
 アリエルは彼のことを、姉たちから聞いた噂以外にほとんどなにも知らなかった。肖像画ひとつ渡されていないのだ。
 
(ああ、神さま。全身の毛は我慢することができます。でも、牙だけは。どうか牙だけはありませんように)
 
 アリエルが大聖堂の入り口にある智天使の像に向かって祈っていると、アーチ型の扉が内側からゆっくりと開いた。
 ラッパが華々しく鳴ったが、それに対する歓声は一切聞こえてこない。
 ついに覚悟を決めなければならない時が来て、アリエルは手に持った白い小花を束ねたブーケをきつく握りしめた。
 そして、大聖堂の中へ一歩を踏み出す。
 参列者はそれほど多くはなかった。これは政治の一環であり、愛の儀式ではないのだと明言するように、立派ではあっても華やかさのない衣服に身を包んだ父の側近が数名。母と乳母。それだけが祭壇の近くに集まっている。
 アリエルのブーケと同じ花で飾られた祭壇の前には、父が立っていた。
 そして、司教が。
 そして……見上げるほど大柄な、古代の戦士のように荒々しい容姿の男性がひとり、白いシャツに漆黒の布を斜めに掛けて、たたずんでいた。
 この人が……。
 
「来なさい、アリエル。こちらがお前の夫となる男だ。名はジュディアス」
 
 厳粛な顔をした父に紹介されて、はじめて、アリエルは夫となる人物の名前を知らなかったことに気がついた。アリエルの中で彼は、牙を持った恐ろしい野獣のような男という認識で、普通の人のように名前があるということに思いがいかなかったのだ。
 しかし、今は。

 ジュディアスと呼ばれた大男は、見たこともないほど冷たく澄んだ灰色の瞳で、アリエルを見下ろしていた。彼の髪は金髪だったが、きらめくような明るさはなく、年月による緑青をまとった金鍍金の銅像のような、鈍い輝きを放っていた。
 元は色白だと思える肌は日に焼けていて、褐色に近い色合いだった。それが男そのものを思わせる頑強な体躯と相まり、息を呑むような迫力を放っている。
 アリエルは彼の口元をじっと見つめた。
  ああ、牙が生えていませんように。
 ふたりは見つめ合ったが、それは、これから結婚する男女が愛情のこもった瞳でお互いの素晴らしさを実感し合うようなものとは、まったく異なった。
 ジュディアスは冷え切った視線でアリエルを見下ろし、観察している。
 無表情を装ってはいるが、そこに喜びがないのは明らかだった。激しい苛立ちがかすかに透けて見える。いくら反乱に負けたからといって、こんな醜女を娶らなければいけなくなるなど遺憾である……そう、言いたげである。
 
「では、ただ今から婚礼の儀式をはじめましょう。新郎、前へ。さぁ、アリエル様も」
 
 司教の呼びかけにアリエルは我に返った。
 いけない。これは人生で一度きりの婚礼の時……。現実に集中しなくては。
 とりあえず、ジュディアスは姉たちが悪しざまに噂していたような醜男ではなかった。牙は確認していないが、全身に毛が生えているわけでもなさそうだった。
 結婚して王宮から出られるのも……悪いことではない。母や乳母を思うと寂しくはあるが、生い立ちのせいで肩身の狭い思いをしてきたアリエルにとって、これは新天地へ羽ばたけるまたとない機会なのかもしれなかった。
 多分。
 もしかしたら。
 きっと、すべては自分次第なのだ。
 どうせしなければならない結婚なら、幸せな結婚に……少なくとも、不幸のない結婚にしたい。
 
「はい、お願いします」
 
 アリエルは毅然と顔を上げて祭壇の前へ進み出た。
 
~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★

続きはこちらでどうぞ!



→『獅子は生贄に愛を乞う』ご購入はこちら!


~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★
ロマンスヒルズの新しい企画が誕生しました。他の作品はこちらから!

ロマンスヒルズコレクション
大人の女性のための恋愛小説
ロマンスヒルズコレクション Romance Hills Collection





恋愛小説レビューサイト『ロマンスヒルズ~勝手にロマンス!』はこちら
bnr