淑女の皆様ごきげんよう。ロマンスヒルズです。

11/5発売になった浅葱先生の新刊をご紹介します。

捕らえ囚われ
捕らえ、囚われ~魅せられて、奪われて
浅葱


「一目惚れと言って信じるか?」
貴族の跡取り娘が美貌の青年にひたすら溺愛される中華ファンタジー

市井で暮らしていた梨英(リーイン)は、自分が貴族の娘であることを知り、跡取りとして教育をうけることになった。その後貴族の黎家から婿をとることが決まり、戸惑いながらも婿となる青年に惹かれていく梨英だったが、黎家の男性は魔性の血をひくという噂があって……

浅葱先生について
インターネット小説投稿サイト『ムーンライトノベルズ』『アルファポリス』等で活動中。
代表作は一迅社メリッサ『初めての人になってくれませんか?』西洋風ファンタジーのラブコメです。

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★オススメポイント~ネット小説のような軽妙なテンポがお好きな方に~

3万字程度の短編です。
中華風ファンタジーなロマンスです。理由もわからずイケメン青年にぐいぐい押されまくる梨英の困惑さが初々しく、
二人のその後が読みたくなるお話です。本作はツイッターの会話から生まれた物語だとか。女性目線でのかわいいお話がお好みの方にオススメです。



登場人物紹介
登梨英(ドンリーイン):貴族である登家の跡取りとなった娘。
黎華夏(リーホアシャー):登家の婿養子になることが決まった貴族の青年。


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「婿養子、ですか」
 
「ええ、黎家から正式に申し出がありました。断わる理由もありませんので受けましたよ」

 黎家、と聞いて梨英(リーイン)は一瞬びくっとした。色気の塊のような青年の顔が思い浮かぶ。まさかね、と梨英は内心冷汗をかいた。
 
 登家の当主夫人は梨英の様子を見て何かあったのだろうと悟った。そうでなければ黎家へ登家の娘が嫁ぐというのに、黎家の息子が婿養子としてくるはずがない。ただどちらにせよ登家は黎家に逆らうことなどできないのだ。早晩登家は黎家に乗っ取られてしまうだろうがそれもいたしかたないことだと夫人は思った。
 
「式は月麗の結婚式の後半年ほどあけて行います。ですが婿養子として入られるのは月麗の結婚式後すぐなので、できるだけ早く既成事実を作っておしまいなさい」
 
「……は?」
 
「黎家の方々は精が強いと聞いています。そう身体を重ねずともすぐに身ごもるでしょう。跡継ぎさえ産めば妾を持っていただいてもかまいませんから、それほど身体は疲れないはずです」
 
「……え?」
 
 夫人は淡々と今後の予定を話していたが、梨英からするとそれらは寝耳に水だった。月麗の結婚式は二ヶ月後まで迫っている。けれど二ヶ月経ったとしても梨英はまだ未成年。それなのに既成事実を作れとはどういうことなのか。
 
「あ、あの奥さま……私はまだ成人していないのですが……」
 
「……あら、そうだったかしら。では成人してからでかまいません。でもできるだけ早くするのですよ?」
 
「……はい」
 
 梨英は内心とても泣きたかった。何が哀しくて政略結婚の道具にされなければならないのか。半年前の自分に何がなんでも逃げろと教えてやりたいぐらいである。
 
(跡継ぎを産めば夫が妾を持ってもいいなんて……精が強いってこととなにか関係があるのかしら?)
 
 市井で暮らし、母には常に男がいたが梨英にはあまり性知識がない。それは母親がしっかりと娘を見ていた証拠だが、その母でさえも黎家の者が娘の夫になるとは夢にも思っていなかった。
 
 黎家の男性の精の強さは伊達ではない。そのせいで成人前から性処理を担う女性と何人も契約しているぐらいである。彼女たちは彼らを手ほどきする。女性を感じさせる方法、女性の身体に負担をかけず愛す方法、そして女性を身体でおとす方法などを教え込み、彼らが結婚する前に莫大な金子をもらって辞めていく。結婚してからは彼らの相手をするのは妻だけになるが、あまりの精の強さに何年かすると妻の方から妾を持ってくれと懇願するほどだという。登家の当主夫人はそれを耳にしていた為、梨英に妾のことを示唆したのだった。
 
「一週間後、貴方の夫となる予定の黎華夏(リーホアシャー)さまがおいでになります。よくお仕えするのですよ」
 
「……はい」
 
 返事をして部屋に戻る途中の回廊で梨英は立ち止まった。
 
(黎華夏……黎華夏って……)
 
 どこかで聞いた名前である。
 
「あ! って、うそっ……」
 
 梨英は慌てて自分の口を手で押さえた。
 
(あの、男……)
 
 顔を見れば確実に思い出すだろう。あろうことか戯れに梨英の口唇を奪っていった青年が登家に婿養子としてやってくるらしい。
 あの美しい青年ならば梨英がわざわざ言わなくとも妾を持つに違いないと彼女は思う。
 
(私だけにしてなんて言わないけど……)
 
 結婚するならば、せめて跡継ぎを産むまでは梨英だけにしてほしい。もしくは梨英にわからないようにしてほしい。
 どちらにせよ一週間後に華夏は来るのだ。その時に詳しく聞けばいいだろうと、梨英は一時考えることを放棄した。


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