淑女の皆様ごきげんよう。ロマンスヒルズです。
11/5発売になった金子ユミ先生の新刊をご紹介します。

シェヘラザード
シェヘラザードの枷
金子ユミ


「姉さん。俺たちはもう、離れられないよ」
10年ぶりに現れた美しき義弟。背徳と禁断のエロティック・ミステリー

──私の罪は、〝おとうと〟の形をしていた──
会社員の月仍は、母の作った莫大な借金を返すために、とある秘密クラブに自らの身体を差し出すことになった。幼い頃の禁断の遊び、義弟の失踪。普通の生活の中で突然目の前に曝け出された、失ったはずの過去の記憶を前に、彼女はある決断を下すが……

金子ユミ先生について
ティーンズラブ小説、BL小説など幅広く活動中。
代表作はセシル文庫『仁義なきオレのパパ!』(ゆみみゆ名義)マリーローズ文庫『アナタを瞳でつかまえる!―天然女子はカメラアイ!?』など。


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★オススメポイント~ミステリーと濃い官能をお求めの方に~
文庫本1冊分の長編です。
とっても…大人のロマンスです。いろいろ濃厚な官能ミステリーです。予想を裏切る展開にドキドキです。10代の頃の義弟との関係とか、両親との関係とか、こう、いろいろ仄暗い欲望とか。一味違ったエロティックロマンスをお求めの方にオススメです。

登場人物紹介

・加瀬月仍:会社員。母の借金を返済するため、秘密クラブに身を差し出すことになる。
・加瀬幾夜:月仍の義理の弟。10年前の夜に突然失踪してしまう。
・堂島悟 :10年前に幾夜と共に失踪した謎の男。


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 真紅の色合いが、肌にうつってしまいそう。
 
 月仍は目の前に広げられたものを、半ば呆然と見下ろした。
 ベビードールランジェリー。バレエ衣装すら連想させるそれは、下着というよりほとんどコスチュームで、シースルー生地の真っ赤な色合いは息を呑むほどなまめかしかった。
 
 胸カップ部分にはアラベスク模様に似た刺繍が施され、付属のショーツにもやはりシースルー生地に繊細な意匠の刺繍がちりばめられている。クロッチ部分には当て布すらなく、しかも両サイドはリボンで結ぶタイプ。日常使いの下着ではないことがありありと窺えた。
 
 これを、私が?
 
 呆れるというより、笑い出しそうな気分で堂島を見た。彼がさらりとつぶやく。
 
「似合うよ」
 
 言い慣れている声音。きっと、何人もの女性にこういうものを着せてきたのであろう。
 都内のマンションの一室。超高層の高級マンションではあるものの、ごく普通の住宅街にある建物だ。もっといかがわしい場所に連れていかれると思っていた月仍は拍子抜けしてしまった。
 
「みんな映画やドラマで妄想をふくらませ過ぎなんだよな。地下室とか廃工場とか? あんないかにも怪しい場所なんか使うわけがない」
 
 日常に、非日常は潜むということか。
 
「あの。母はどこに」
 
「ここにはいないよ。ああ、でも大丈夫。手荒なことは一切していないから。ただ、こちらも仕事なんで。借金が完済されるまでは監視下に置かせてもらう」
 
 最初に連れられて入ったこの一室を『控え室』に当てているようだった。立派なドレッサーがしつらえられ、浴室まで付いている。
 
「シャワー浴びて、それを着て。三十分くらいしたら迎えにくる」
 
 そう言うと、堂島は部屋から出ていった。屋内にはことりとも音が響かない。月仍はそっと部屋を見回した。
 
 なんなのだろう。この展開。嘘みたいだ。
 とはいえ、堂島と再会した驚きが、ほのめかされた幾夜の存在が、月仍の神経を痺れさせていた。不安も恐れもあまり感じていない。
 
 じんじんと、身体の奥底が呼んでいる。
 
 幾夜――。
 
 振り切るように息をつき、服を脱いだ。最後に身に着けていたショーツすらも乱暴に脱ぎ捨てた月仍は、ドレッサーに自分の裸身を映してみた。
 少年のような華奢な腰回り。それでいて胸は大きい。貪欲な果実みたい。この十年、月仍は自分の身体を疎ましく思っていた。
 
 なぜ、身体だけが女になっていくの。幾夜はもういないのに。
 
 言われたとおりシャワーを浴び、赤いベビードールを身にまとった。ショーツは何度リボンを結び直しても不安定で、心もとないことこの上ない。胸カップ部分の刺繍が隠してはいるが、乳首は透けて見えているし、これでは全裸と大差ない。
 鏡すら見る気になれず、投げやりにソファに身を沈めた。視線を下に向けると、豪奢な赤い布に包まれた裸身が見える。別人の身体。これは、私のものじゃない。
 ノックの音がした。返事をすると同時に堂島が顔を覗かせる。真紅のベビードールを着た月仍を見て、かすかに瞳を揺らがせた。
 
「似合ってる」
 
 素っ気ない声音。そのせいか、本音に聞こえた。彼は室内に踏み込むと、突然月仍の腕を掴んで引き寄せた。
 
「!」
 
 強い力に、初めて恐怖心が湧く。大人の男の力。さっと月仍は身をすくませた。
 
「やだ」
 
 言いかけた月仍の身体を、堂島が横抱きに抱え上げた。「ええっ」、驚いた月仍は彼の腕の中でじたばたと足をもがかせた。
 だが、堂島は月仍の抵抗もなんのその、涼しい顔で言った。
 
「このほうが手間がかからない」
 
「……」
 
「大丈夫。怖いことはないから。さっきも言ったろ? あなたは、プロの手で気持ちよくなってくれればいいんだ」
 
 そう言って部屋を出た。廊下を右手に進み、広いリビングに出る。革張りの重厚なソファ、壁にかけられた大画面の液晶テレビ。立派だが、誰もいないせいかやけに寂しげだ。 
 堂島は無人のリビングを横切ると、今出てきた廊下の対角線上に位置する部屋に入った。彼の腕の中で、月仍は身を強張らせた。
 
 真紅色の絨毯が敷き詰められている。その色を、部屋の隅に置かれた複数の間接照明がぼんやりと照らし出していた。けれどそれ以外何もない。ただ一つ、部屋の中央にぽつりと置かれた椅子以外には。
 童話に出てくる玉座のようなアンティークなデザインの椅子だ。座面と背もたれ面のクッション材にはやはり真紅の布が張られ、深みのある色合いの木材のボディには細かい透かし彫りが入っている。背もたれの両端は尖りを帯びた突起状のデザイン、対して猫足のデザインは丸みを帯びていた。
 
 椅子そのものが気高い王女のよう。その椅子の上に、堂島は月仍をすとんと下ろした。柔らかな座り心地、見た目の印象より大きい座面。月仍は座らされたとたん、小動物のようになってしまう。
 すると、すくんだ月仍の左手首を堂島が掴んだ。腕を上げさせ、背もたれの突起部分に何かで固定する。
 
「!」
 
 月仍は目を見張った。
 
 黒い手枷。内側には柔らかい素材が使われているが、拘束力は高い。実際、背もたれに繋がれた月仍の左腕はまったく動かせなくなってしまった。

  息を呑んでいる間に、堂島は月仍の右手も同じく背もたれの突起部分に繋いでしまう。両腕を広げて高々と上げた形になり、自分の胸元が露わになる。透けた下着の下からちらちらと覗く胸も隠せなくなり、月仍は思わず椅子の上で足を縮こまらせた。
 ところが、堂島は月仍の左足首も掴むと、大きく開かせて肘掛に乗せた。そして太ももの部分をさらに大きめの枷で肘掛に固定した。
 
「やぁっ」
 
 もがくが、すでに身動きできない。堂島は動揺する月仍に構わず、淡々とした手つきでやはり右脚も肘掛に固定する。彼の手際の良さは、慣れきっていることを窺わせた。決して乱暴ではないが、有無を言わせない。
 
 もうどこも隠せない。逃れようともがけばもがくほど、淡い明かりが肌になまめかしく反射する。
 
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