淑女の皆様ごきげんよう。ロマンスヒルズの紗羅でございます。

海外翻訳ロマンス小説ロマンス小説と日本のティーンズラブ小説。どのへんがどう違うんでしょう。
どちらも、大人の女性向けの恋愛小説で、中にはエロティックな描写が充実しているものもあるからか、知らない人からみたら違いが分からないかもしれませんです。
今回は、商品性の違いからそれらの違いを考えてみました。

あ、このコラムのソースは?というご質問を受けましたのでお答えしますと
私が運営している恋愛小説レビューサイト「ロマンスヒルズ~勝手にロマンス」
定期的に行っているアンケートやランキングとかネット書店の売上データなどの傾向や
人気があるタグの傾向とか、ティーンズラブ小説の編集経験とかを中心にしつつ
編集者の方や翻訳者先生や作家先生たちからお伺いしたお話とかいろいろありますけれども
一番大きいのは、私自身がロマンスが好きなので、ジャンルにこだわらずじゃんじゃん読みまくった際に
気づいた作品傾向、ということになります。ご了承ください。



1.ロマンス小説とは

海外、主に英語圏の作家たちによる恋愛小説です。
海外には、日本のように少女漫画の文化がないため、ロマンス小説がその代わりになっています。
というくらい、女性たちの心の支えになっています。
何も知らない人は、ただのエッチな本だと思っているかもしれませんが。実は全然ちがいます。
おおざっぱにロマンス小説と言われていても、
少女~大人まで幅広い層が読むので、ジャンルも細分化されています。

大きく分けると
ヒストリカル(歴史)
コンテンポラリ(現代)
パラノーマル(人外)、ファンタジー
ヤングアダルト(少女向け)、
エロティカ(官能)

など。


エロティックな描写がない少女向けの「ヤングアダルト」では、映画化された『トワイライト』が有名ですよね。
また、ロマンス小説の元祖といわれる英国文学最高峰『高慢と偏見』の世界観を踏襲したものなど、子供が読んでも大丈夫なジャンルもあります。
一方、数年前大ヒットとなり映画にもなった『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』のような、BDSM(ご主人様との主従関係があるSM)や、最初から最後までベッドシーンというような、とにかく官能を追求した作品なども多いです。

有名なのはハーレクインですが(今はハーパーコリンズ)、ハーレクインには独自のテンプレートがありまして、読者層のニーズに合わせた多彩なジャンルを提供しています。
他にも多くの出版社があり、中には宗教や人種をテーマにした重めのものまで様々です。

→詳しくはこちらをご覧くださいませ。


でですね。

実はロマンス小説ってのは、ただの恋愛小説じゃないんです。

女性が人間として自立、独立するためのプロパガンダなのです。



多くのロマンス小説は、男性視点、女性視点が入り混じるタイプでして、ヒーローとヒロインが出会い、恋に落ち、障害を乗り越えつつ成長し、ハッピーエンドになる。というかんじです。
その途中に、ホットな官能シーンがあったりします。
でもそれは、愛と性は切り離せないというメッセージだったりします。
もちろん昔の作品はそうでもなかったりしますので一概には言えませんが、最近のロマンス小説の傾向は大体そんなかんじです。

ロマンス小説のヒロインは、必ず成長します。
どちらかというと、昔の少女漫画のヒロインみたいなかんじです。
いじめられたり貧乏だったり苦しいところから、自分の力で這い上がり、その過程でヒーローと出会う。ヒロインはヒーローから幸せにしてもらうだけではなく、自分で愛を掴み取り、成長し、時にはヒーローとぶつかり合う。男と女は同じ人間として対等だというメッセージもあります。

最終的にはハッピーエンドではありますが、女性が男性に依存することなく、自分の力で幸せを勝ち取るというお話。
ヒーローは大富豪や社長、王様や王子様など経済力も地位も高い人たちばかりですが、ただの玉の輿のお話ではなく、経済力のある男性を手に入れることができるような女性になりなさい。そのためには自分が成長する必要があるんだよ。女性を軽んじるような男とは別れなさい。自分を強くもちなさい。という強いメッセージがこめられています。

これは、ロマンス小説が読まれている国、特に米国を中心とする英語圏では、女性の人権などがとても重要視されているということにもなります。
とはいえ女性の自立が推奨されている一方で、DVやモラハラ、レイプなどの事件が後を立たない世界。
男性と同じ立場で仕事ができるキャリアウーマンとなることは女性たちのあこがれでもあります。
ロマンス小説は、家庭で、職場で、前向きに働き続ける女性たちへの応援歌であります。



2.ティーンスラブ小説について


一方で、日本の恋愛小説はどうでしょう。
いろいろありますが、ここではライトノベルの位置づけにあるティーンスラブ小説を例に出します。

BL小説等とは違い、ティーンズラブはまだ歴史が浅いです。
とはいえ、ここ数年でレーベルが増えまくり、電子書籍も含めると20以上のレーベルがしのぎを削っています。

日本は、少女漫画、少女小説という、海外の「ヤングアダルト」に位置づけされるコンテンツが多いということもあり、エロティックな描写を含むティーンズラブ小説というジャンルとしては、それらから独立しているというイメージです。

ティーンズラブ小説は日本の大人の女性のための恋愛小説です。
王様や王子様とヒロインが出会い、恋に落ち、ハッピーエンドになるお話が主流です(中にはバッドエンドもあるのですが)。ホットでエロティックな描写が必ずあり、恋愛と官能を楽しめる作品となっています。

→詳しくはこちらをご覧ください

海外ほどジャンルが明確にわかれていませんので
ロマンスヒルズでは、とりあえず性描写がない少女系ラノベ(少女小説)とは別に

乙女系ラノベ(ヒストリカル、ヒストリカル風ファンタジー)
大人系ラノベ(現代モノ)

の2種類に分けています。


ティーンズラブ小説にも、ロマンス小説と同じようにテンプレートがあります。
これは、ここで書いてしまうと誤解を生むかもしれないのでアレですが
ロマンス小説と基本路線は似ているのですが大きな違いがあります。


ティーンズラブ小説は「ヒロインが成長する必要がないロマンス」です。


これはどういうことなのか。

ティーンズラブ小説のヒロインは、物語のはじめから最後まで、特に成長しなくても良いのです。
もちろん成長しまくるパワフルなヒロインの作品もありますが、ティーンズラブ小説はヒロインの成長をそこまで求めていません

ヒーローは、受身のヒロインに愛を囁きます。ヒロインは何もしなくていい。ヒーローが全てを教えてくれます。愛も、エロティックな気持ちよさも、幸せも、全てヒーローが用意してくれます。
時にはヒーローは強引で傲慢で、無理やりヒロインを陵辱します。媚薬も使われます。
でもヒロインは、困惑しながらもヒーローの愛を全て受け入れます。

あなたは今のままでいい。そのままのあなたを愛するよ。
君は何もしなくいていい。ただ僕に身を任せて。


ティーンズラブ小説のヒーローはそういって、ヒロインを甘やかします。
誤解とか事件とかいろいろありますが、最終的にはヒーローの愛でヒロインは幸せになります。
ストーリー上、ヒロインが事件を解決したり、積極的に出ることがそこまで求められていない。
愛らしく美しい受身のヒロインが多いです。

ああ、もちろんそうじゃないお話も多いですよ。
ヒロインとヒーローが大冒険して活躍するようなタイプのお話もあります。
でもでも、どちらかというとそういうタイプの作品は、性描写なしの少女小説に多いです。
性描写あり、官能シーンありのエロティックなティーンズラブに多いテンプレートとして、受身ヒロインがある。ということです。




3.ロマンス小説とティーンズラブ小説の違い


ヒロインが積極的か受身か。
これは、ロマンス小説とティーンズラブ小説の大きな違いです。
どちらが優れている、とかどちらが良い。というわけではありません。

商業小説は、作品というより商品とみなされることは何度もお伝えしました。
ということは、これは商品性の違いということです。
作品を売るためには、顧客ニーズにあわせて商品化する必要があります。
ロマンス小説もティーンズラブも、何百冊も読みまくって読みまくって得た持論ですが


ロマンス小説は、女性の自立や独立、成長を応援、賛美するもの。

ティーンズラブ小説は、そのままの自分を受け入れてほしいという女性の願望をかなえるもの。



という差なのではないか、と。




日本という社会は、女性が抑圧されています。

特に性とか官能とかについては、女性が自分の意思をもつことが恥ずかしいことだと教育されているので、女性同士の間でも、よほど仲良くないかぎり、そこまでおおっぴらに話すことはないです。
性的な欲望や願望があったとしても、それを心の奥にしまいこむことが美徳とされます。

そのためか、恋愛小説で女性が性に開放的だったり、意欲的に自分から進んで官能や気持ちよさを追い求めたりすると、「このビッチめ!」と、読者のほうが拒否感を示すことも多いのです。

ヒロインには処女性が求められます。
特に何人もの男性との経験があるヒロインはビッチとみなされて嫌われるという(汗)

ロマンス小説では、愛や性、官能を追求することは恥ずかしいことではないというメッセージ性が強い作品が多いので、ヒロインは貪欲に快楽を追い求めていきます。
時にはヒーローを喘がせます。いろいろな独創的な方法を使って。

一方ティーンズラブ小説のヒロインは、全てを男性から与えてもらいます。
「君はそのまま。なにもしなくていい」といわれますし、そういうプレイです。
なので、ヒロインからヒーローを喘がせるような破廉恥なことはあまりないです。


ロマンス小説でもティーンズラブ小説でも、日本で売り上げが伸びるのは
おしとやかな淑女で、処女で、全てをヒーローから教えてもらう系だそうです。

私がどんなにネットで「未亡人がいい!童貞ヒーローを攻める年上未亡人が至高!」と騒いでも
売り上げが良いのは処女ヒロインです。

となると、ティーンズラブ小説というのは、多くの日本の女性の願望をかなえるタイプの恋愛小説のテンプレートである、ということが言えるかもしれません。
おそらくこういうテンプレートができたということは、売れ筋の商品を元に出版社側がマーケティングした結果だと思うからです。


ロマンス小説を読んできた人がティーンズラブ小説を読むと「おや?」と首をかしげることが多いと聞きます。

「どうしてこのヒロインは何もしないのだ」
「頭が悪いのか。バカなのか」
「ヒーローにまかせっきりじゃないか。ストレスたまるだろう」


と、拒否反応を示す方もいます。


一方で、ティーンズラブ小説を読んでいた人がロマンス小説を読むと

「地の文が多すぎて読みにくい」
「恋愛だけの話がいいのに事件が起こりすぎる」
「ヒロインが積極的すぎる」
「こういう話をよみたいわけじゃなかった。つかれた」


と拒否反応を示す方もいます。

これは、読者が求めている要素が違う。というただそれだけのことでして、
作品的にどちらが優れているとか、劣っているとかそういうことではないのです。

なので、恋愛小説が好きな方は、食わず嫌いでどっちかしか読んでいない方は
どっちも読んでみると新しい発見があるかもしれません。
どちらのジャンルも素晴らしいお話がありますから。



で。



ここからは私の感想なのでアレですが。


ティーンズラブ小説のテンプレートが、多くの日本女性の願望だと考えるとですね。
今の日本女性って、すごく辛いんだろうなあ。と思うです。

子供のころに何度もみた漫画やアニメでは、ヒーローやヒロインは敵に勝利します。
でも、大人になって、現実はそうじゃなかった。特に女性は。

女性はヒーローになれる場所がない。
ガンガンいこうとしても、女性にはどこにも行き場所がない。
仕事、結婚、家庭、子育て。女性として頑張っていきようとしても、自分のがんばりを認めてくれる場所がない。


だって、女は全部できて当たり前だと思われているから。

疲れた。もう疲れたの。



そういう声が聞こえてくる気がします。

もちろん人によって違いはありますが、ロマンス小説のヒロインみたいに、前向きにガンガン行こうぜ!ということ自体に疲れているんだとおもうのです。


今のままのあなたでいい。そのままの君を愛している。僕に身を任せて。


そういって、何も考えずにただ愛されたい。甘やかされたい。幸せになりたい。
官能を与えてほしい。エロティックな夢を見させてほしい。

だって、現実はこんなに辛いから。小説の中だけでも幸せでいたい。



もしこれが、多くの日本女性の願望なのだとしたら。
いろいろ考えさせられます。

キャリアウーマンなどのがんばる女性をテーマにした、世界的ベストセラーなロマンス小説が日本では売れないといわれる理由はそこなんだろうなあ、とおもうわけです。
実際、サイトでアンケートを取りますと、どんなにロマンス小説が好きな人たちでも、受身なヒロインがヒーローに甘やかされるお話を望む声が高いという事実もあります。
ロマンス小説が好きな人も、やっぱり甘やかされたい。という方が多いのです。


ああ、すこしテーマが重くなってしまいました。申し訳ありません。
日本女性の心と性の開放とか、難しい話はおいておくとして。
(購買層の年齢とか時代背景とか宗教観とかいろいろ突っ込みどころはあるかとはおもうんですが
それはまた別の機会に)


ロマンス小説。ティーンズラブ小説。どちらも女性を幸せにする作品であることに違いはありません。
どれも疲れた女性の心を癒す清涼剤でございます。

これからも多くの素晴らしい作品が世に出ますように。
一人でも多くの人が本を読んで、心が幸せになりますように。

ロマンスファンの読者として、切に願っております。



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